柔軟な音楽の楽しみかたのススメ ブライアン・イーノと環境音楽
どうもdです。
私、ギタリストであるのですが最初に弾きたいなと思った楽器は
シンセサイザーで、今もその想いはこじらせている最中であります。
普段、アコギを弾く傍らシンセ/PCで小曲などを使っていると
よく「デジタルな音楽」に好意的でない意見を聞きます。
生楽器のほうが気持ちいい・・・いやいやシンセの音だって気持ちよさは
いっぱいあるのですよ。
より柔軟な視点のほうが音楽って楽しめると思うのです。
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1978年、元ロキシー・ミュージックに参加していたシンセ奏者/プロデューサーの
ブライアン・イーノ※1によってAmbient Music Ambient 1: Music for Airportsと
名付けられたアルバムをリリースします。
その後、Ambient Musicとしてのアルバムを数年置きに発表されました。
このMusic for Airportsと題されたアルバム、そのまんま空港のための音楽として
作られ実際にニューヨークのラガーディア空港にて使用されているとのこと。
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このアルバムが作成される経緯がちょっと好きなエピソードです。
1975年に事故にあったイーノ、入院先の病院のお見舞いで
レコードをプレゼントされました。18世紀のハープ音楽だったそうです。
お見舞いをもらったあと、なんとかレコードをかけ聞いてみようとするのですが
ボリュームが小さい状態でステレオスピーカーの片方は音が出ていない状態でした。
元気がなかったイーノは、直すのも面倒くさくなってそのままレコードを聴き始めました。
「で、そのときふと、これって新しい音楽の聴き方かも?とひらめいたんだ。
このときの経験が、光の色や雨の音と同じように、環境の一部と化した音楽というものを
ぼくに教えてくれたんだ。ぼくがこの作品を、比較的小さめ音から、
聴こえるか聴こないかぎりぎりの音量でかけるようにすすめるのは、そんな理由からだ。」
昔からBGMとして作られる音楽は沢山あったと思うのですが、
Ambient MusicとしてMusic for Airportsには、単なるBGMでは終わらない拘りが込められています。
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1995年のイーノ日記より
●中断可能でなくてはならない(構内アナウンスがあるから)
●人々の会話の周波数からはずれていること(コミュニケーションが混乱しないように)
●会話パターンとは違う速度であること(同上)
●空港の生み出すノイズと共存可能なこと
●空港という場所と目的に関係して、死に備えられるような音楽であること
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死に備えられるような音楽であること・・・すごい気遣いだw
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そしてこのシンプルな音楽、シンセやループなどの
いわゆるテクノ的な手法が使われています。
といってもまだデジタル技術が発達していなかった時代で
ループはサンプリングでなくテープの切り貼りで行われたようです。
生楽器としてピアノも使用されているのですが
ミニマル的に配置されたシンセ音聞いても、
不快なノイズとしては聴こえず、静かな気持ちよさを覚えます。
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・・・普段、個人の感情表現や自己顕示として使用されることが多い音楽、
このような環境に馴染むような視点で作られた音楽、
心理的な高揚と無縁な音楽は退屈な音楽でしょうか?
より柔軟な視点のほうが音楽って楽しめると思うのです。
※1 ブライアン・イーノ
グラムロック・ニューウェーブに分類されるバンド「ロキシー・ミュージック」に在籍。
バンドを去った後に前衛的な音楽に傾倒、実験的なアルバムを発表。
先鋭的なロックアルバムのプロデューサーとして招聘されることも多く
デヴィッド・ボウイ、U2、コールドプレイなどのアーティストのアルバムをプロデュース。
●Windows 95の起動音
「Windows 95」の起動音「The Microsoft Sound」は彼の作曲によるものである。
「The Microsoft Sound.wav」のプロパティには彼の名が記されている。
「CHRONICLE POP MUSIC CRITIC」誌の1996年のインタビューによると、
マイクロソフトからの依頼は「人を鼓舞し、世界中の人に愛され、明るく斬新で、
感情を揺さぶられ、情熱をかきたてられるような曲。ただし、長さは3秒コンマ25」であったという。
当時新しいアイデアが思い浮かばずに悩んでいた彼は、
これを「待ち望んでいた課題だ」と快諾し、製作にとりかかった。
最終的に84個のごく短いフレーズが製作され、
その中の一つが「The Microsoft Sound」として提供された。