それでも夜は明ける
意識して観たわけではありませんが、
ジョン・リドリー監督の作品を続けて観たので今週はその2作品を紹介します。
今回は実話を元に作られた衝撃的な作品、“それでも夜は明ける”。
音楽映画に分類されるかどうかは微妙なところかもしれませんが、
色んな場面で音楽が関係してくるので。
1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、
家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモンは、
ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。
狂信的な選民主義者エップスら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、
彼は自身の尊厳を守り続ける。
(2013年・アメリカ)
奴隷制の話は毎回言いようのない遣る瀬無さに襲われるんですが、
この作品も何ともいたたまれない気持ちになりました。
自由に証明書がいるなんて、自由とは一体何のかを考えずにはいられません。
悲しくて醜い「人間の業」も。
それは勝手に作り出しているものもあるからこそ、
余計やりきれない気持ちが沸き立ってきます。
主人公のソロモンは元々バイオリニストで、
要所要所で音楽も関わってくるんですが、
陽気な音楽さえもあまりに空々しく感じる悲しさ。
人としてのあり方、その常識や観念そのものが
文字通り「狂っていた」時代があったのだという事を、
ただただ受け入れるしか出来ません。
(そしてまだその考え方が残っているという事実も)
あればあるで文句を言われ、ないならないで文句を言われる。
それこそどうしようもない狂っている状況。
救いも望みもないように見えても、
それでもそれを求めるから生きるしかない人間を痛感します。
所々で流れる黒人霊歌も心に響きました。